表現者・森望インタビュー──自分は男性としてドレスを着たい
、何か特別なきっかけがあってこういう発信を始めたというわけではないんですが、あえてきっかけを探すとしたら、「自分は何が好きか」が自分でわかったことが大きいです。
昨日も私服でスカート履いていたけど、女性がパンツスタイルする時と同じ感覚。
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2021/09/10
インタビュイー |
森望
(もり・かなた)

俳優、モデル、アートディレクター、フィギュアスケーター。2021年モデルとしてパリコレクションに初出演。自身で『HOPE magazine』を作り、アートディレクターとして表現の場を広げる。俳優としてもデビューをし、年内に主演の短編映画が公開予定。フィギュアスケート歴15年。

写真|岡田翔真(@okadashoma__

elabo編集部

今日は、インスタグラム、TikTok、YouTubeで、ジェンダーの流動性(フルイディティ)を感じさせる作品やパフォーマンスを展開している森望さんにお話を伺うことになりました。今日はどうぞよろしくお願いいたします。

西田海聖

最初に、森さんが、ジェンダーニュートラルなファッションを発信し始めた理由をお尋ねしたいです。TikTokの投稿のひとつに「男らしい面+女らしい面=自分らしさ」とコメントされていたのですが、そのような「自分らしさ」を発信できるようになったきっかけなどを教えてください。

@kaaant12

男らしい面➕女らしい面=自分らしさ

♬ original sound - Tai’yon Thomas

森望

今日はよろしくお願いします。基本的には、何か特別なきっかけがあってこういう発信を始めたというわけではないんですが、あえてきっかけを探すとしたら、「自分は何が好きか」が自分でわかったことが大きいです。男らしいマスキュリンな自分になりたいのも自分だし、ドレスが着たいというのも自分の欲求としてありました。以前は、そのどちらかを採らなきゃいけない、みたいな感覚が自分のなかでありました。でも、どっちも好きなんだから、どっちも採ればいいよなって思ようになって。それがあの投稿に表れたのかなって思いますね。その後ますますどっちも見せるほうが面白いじゃんって自分でも思うようにもなってきました。

海聖

僕は小さい頃に親のヒールを履いたりとか、口紅をこっそり塗ってた記憶があるんですけど。

わかります(笑)。

海聖

でも、そういったものに興味があることはどこか自分のなかに隠そうとしていました。これほど多様性が認められていっている時代でも、女性的なものへの感心や要素を閉じ込めている自分がいたので、望さんが今されていることに、励ましと共感を感じています。

ありがとうございます。

男女二項対立に縛られない表現

elabo編集部

森さんの表現がどういう文脈、流れのなかに位置づけれるかなあっていうようなことも考えていました。私は1970年代のニューヨークで生まれたこともあってか、ゲイのカルチャーやLGBTQの友人知人となんの違和感もなく生きてきました。とはいえLGBTQの当事者でも専門家ではないので、例えば森山至貴さんの『LGBTQを読みとく──クィア・スタディーズ入門』(ちくま新書、2017)なども参照しながら考えると、1969年にストーンウォール事件があって、ゲイ解放運動があって、しかし当時すでにドラァグカルチャーも花開いていたのに、あくまで見た目も男性のゲイが中心の解放運動だったとありますね。男女二項対立的な考えは同性愛の世界でも強く、加えて女性性の立場は弱く、男性性が中心だったとされています。ここが課題で、変わっていったらいいという点だと。

森さんの表現には、男性性を表現するゲイカルチャーともドラァグとはまた全然違う新しさがあると思いますし、海聖くんもそこに新鮮さを感じていると思うのですが、その違いにとても興味があるので、森さん自身の言葉で説明していただきたいのですが、いかがでしょう?

そうですね。ドラァグクイーンって女性性を極限的に魅せるもなのかなと思っていて、それと真逆にあるのが男性性を見せるGOGOダンサーだと思うんです。僕の周りでも、女っぽいとか男っぽいとかどちらかに当てはめてしまうことが多いように思います。でも「自分は自分」だと思いますし、女性らしい表現と男性らしい表現が真逆だと仮定した場合、僕のやりたい表現はそのグラデーションのちょうど真ん中かなと思っています。あんまり正確に説明できないですけど(笑)。

出発点はハリー・スタイルズのドレス姿

elabo編集部

森さんの説明とてもよくわかりますよ。森さんのインスタを開きながらお話していきたいんですけど、森さんの撮影を支えていらっしゃる方たちは、今おっしゃってたような感受性や動機を共有してやってらっしゃる方たちなんですか?

そうですね、僕が『HOPE Magazine』でモデルをやった写真は、ヘアメイクを担当なさった方が、自分の感覚をとてもよく理解してくださって、共感してくださいました。最初は『HOPE Magazine』のためじゃなかったんですけど、作品撮りをしたいっていう話をして、その意図をスタイリストさんとフォトグラファーさんに伝えてもらって、初めて撮った作品だったんですけど、それがどれも良くて。

海聖elabo編集部

本当に良いです!

自分も感情のグラデーションが上手く表現できたかなって思いました。男らしくスーツを着ている時もあれば、ドレスを着ている時もある。でもあくまでも、僕は男でいたい。女装したいわけじゃない、っていうところが表現されている写真になっていると思うし、すごい男らしい格好をしていても付け襟をしていたり、乳首にお花がついていたり。

elabo編集部

とても可愛いです。

ヘアメイクさんとかメイクさんがつけてくれて、すばらしいアイデアだなって思っていたんですけど。自分はあくまでも男性として存在したいから、ドレスを着たときにもなるべく筋肉が見えるようにしたり。それがうまく表現できたかなーっていう感じですね。

海聖

作品を通じてそうしたコンセプトが伝わってきます。今までのこういうジェンダーニュートラルなファッションって、どちらかといえば女の子みたいな華奢な子、女性に近いような男性がやっていた印象があります。望さんみたいに筋肉もあってこういうジェンダーニュートラルなファッションをしている方を、日本では見た記憶があまりないんです。その表現方法に共感したし、ほかの人もすごく共感してると思うんですけど。周りの近しい方々からは、どういうリアクションや反響がありましたか?

えー、なんか全然反響は感じてないんですけど(笑)。

海聖

えーほんとですか! 

みんな「めっちゃ綺麗」とか言ってくれるけど。やっぱり、どこか男性女性のどちらかに分けたがるんですよね。セクシュアリティを問わず自分の周囲の人も、みんなどちらかに結構分けたがるんですよ。ドレスを着たら、メイクとか雰囲気も女らしくしなきゃいけない。男らしくするなら男らしくする、みたいなのがたぶんわかりやすいし、表に出るんだったらそっちのほうがキャッチーにはなるんでしょうけど、それは自分じゃないって思ってて。それをスタッフの方々が理解してくださったおかげで、ちゃんと表現できたかなと思います。

『HOPE Magazine』オフショット

じつはヨーロッパにはこうした表現の先例がちょこちょこあって、自分はそれに憧れています。ですので自分のが新しい表現って言われると、そうではなくて、自分も真似してるだけで、まだ先端的な表現ができている気はしないですね。一番のきっかけはハリー・スタイルズさんの『VOGUE(US版)』の表紙で。

elabo編集部・海聖

ああ、なるほど。

That's what I want! これやりたかった〜、これでいいんだって気づかせてくれて。彼はあくまでも男性として着ているじゃないですか。

elabo編集部

それは本当にそうですね。

それがすごくかっこよくて。それから「これがやりたいんです」って言えるようになって。だからハリーから広がっていったって感じですね。

ほかには、Palomospainっていうファッションブランドがあるんですけど、ドレスとかもメンズファッションとして作ってて、最近はすごく影響受けてます。自分も最近Palomospainのアカウントに載ったんですよ。このブランドの真似していろいろストーリーとか上げてたら、このブランドから連絡来て。

胸を出した独特な形の水着は、男性だからこそ着られるような水着で面白いなって思う一方で、そもそもなぜ女性は胸を隠さなきゃいけないのかって言う疑問も生まれました。

このブランドのモデルはメンズがドレスを着ていることが多く、基本的にはメンズブランドとして出しているところが可愛くて。でも、メンズだけじゃなくユニセックスの表現もしている点も好きです。

海聖

素敵なブランドですね。

みんなこういう格好してるけど、男性として魅力的なんですよ。自分もその点に共感していて、このブランドは、そういう姿勢をまさしく表現しているなって思っています。このおしり出ているジーンズとか可愛くて欲しかったんですけど、もう売り切れちゃって。

elabo編集部

こういうファッションを見ていると、森さんが目指しているものが、ますますよく理解できる気がします。いわゆるストレートな子たちのカルチャー以外でも、男女二項対立に囚われがちだった。LGBTQの問題でもありますが、より中間的なグラデーションに多くの人たちが気づき始めたのが、2020年代のひとつの大きな変化かもしれないですよね。

海聖

女装しているっていう感覚でもないんですよね?

はい、自分は全然違いますね。昨日も私服でスカート履いてたんですけど。女性がパンツスタイルする時と同じ感覚かなって思います。


海聖

なるほど。

でもスカートってほんと気持ちいいって思った(笑)。すごく風通しがいいです(笑)。

elabo編集部

海聖くんが、子どものときにハイヒールに憧れたとおっしゃっていましたが、私は女性で、例えば、一方でハイヒールを強要されるのはおかしいっていうフェミニズムの主張にも共感する。けれど他方で、そこが森さんや海聖くんの関心と重なるとこなんですけど、ハイヒール自体にはやはり美しさやパワーがあると思っていて大好きです。そしてそのハイヒールの美しさを追究するのは、女性でも男性でもどちらでもいいというか。

そうですね。

elabo編集部

女性だからできる表現もあるだろうし、森さんだから、海聖くんだからできる表現も絶対ある。こういうジェンダーを自由に捉える感覚って、ファッションやアートの領域ではずっと存在したいるように思います。アートの文脈で先駆的だった1970、80年代に活躍したメイプルソープにしても、日本でもずいぶん展覧会も行われたわけなんですが、彼がセルフポートレイトで表現しているような、男性でありながら女性的なものを表出させた表現が、日本にも浸透したという感じはなぜかあまりしませんね。ですので、いまこういうかたちで、2000年ぐらいに生まれた皆さんと別の道を経由したうえで、ジェンダー・フルイディティの表現が良いっていう点で接続できることに感動します。森さんにとっては、ファッションのほうが、芸術よりもダイレクトにインスピレーションを与えてくるものでしたか?

左:Robert Mapplethorpe: The Archive (Getty Publications –)
右:ロバート・メイプルソープ写真集 (Parco vision contemporary)

そうですね、自分はファッションが結構近かったです。両親も祖母もファッション業界で働いていたということもあって。祖母は1980年代の日本のファッション全盛期の頃に働いていた人間で、とくに影響を受けたかもしれません。

elabo編集部

その空気が森さんにまで伝わっていくものがあったということなんですね。

そうですね。自分は兄弟もいるんですが、結構おばあちゃんっ子で、祖母の血が一番入っているのは自分ですね(笑)。祖母から服ももらっています。

海聖

インスタとかにも上がってたりしますか?

上がってると思いますよ、祖母の服たくさん着ているので。

HOPE Magazineの挑戦

elabo編集部

『HOPE Magazine』のことについてもいろいろ話を聞きたいんですけど、一番新しい投稿だと、森さんがスタイリストをなさって、モデルさんは別の方がなさって撮られたのもあるんですけれども、森さんはご自身で着て表現していく部分と、スタイリスト、ディレクターとして、今後こういうものを発信していこうっていう、両方のお考えはあるのですか?

はい、自分がスタイリングしたこの作品は、友達からも評判が良くて、これだけですべて凝縮された感じがして僕も好きなんです。

海聖

凝縮してますよね。このナイキの靴下もあえてですか?

これは彼が普通に履いてきたもので、それに「ヒール履かせよう」ってなって。毛が濃くて、そのまま履いてるっていうのがすごく好きです。

elabo編集部

いいですね。

まあでもこれも、真似事の段階なんで全然まだまだなんですけど。自分自身が写真を撮ることができたら一番いいなとは思うんですけど、残念ながら写真のセンスが全然ないんで、ディレクターの立ち位置で作っていくことになりますね。『HOPE Magazine』ではこれからいろいろな男の子にモデルをしてもらいたいと思っています。あと現実だけど、ちょっぴりファンタジーなのとか、ファンタジーっぽく見えるけど現実みたいなのとか、そういう表現に挑戦したいですね。自分は、良くも悪くも服を着たからって何にも変わることがないと思っているんです。精神的なものが大事だし、その子が自信をもって着ているかどうかで、全然違って見えるんですよね。だから、例えば、全然似合ってないドレスを着ている子がいたら面白いと思うし、そういうのを見せていけたらと思います。

どのように生きていくかを考えた瞬間

elabo編集部

森さんは大学でフィギアスケートやってらっしゃったとのことで、今のような表現に踏み出したっていうことと、ご自分のキャリアをどのように考えられていますか?


うーん、スケートを引退してから3年ちょっと経っているんですけど、やっと表現したいことを始めることができたのは、今年になってからですね。スケートやっている間に、1年間俳優の勉強で学校に行って、その経験が生きてきた感じがします。作品を通してその人の感情を知ることができるとか、ほかの人の知らなかった感情を知ることができるとか、映画は勉強になるものなんだなって思って、今も『HOPE Magazine』のような表現から映画制作に展開できることを目標にしています。

あと、自分は中学生ぐらいの時に自分がゲイだと気づいて、その時に一回自分のなかでそれまで当たり前だと思っていた将来像がなくなっちゃったんですね。両親は仲が良く、家族も仲がいいので、結婚や家庭を持つことが当たり前だと思ったんですけど、自分はそれはできないんじゃないかって中学生の時に思って。そのときに、やりたいことをやって仕事で生きるしかないと決心しました。その時から、「やりたいことをやらないと絶対ダメ」をモットーに生きているので、なるべく自分の気持ちに素直に生きてますかね。スケートを辞めた後も自分の心に従うようにしてるから表現する道を選んだし、この3年ずっと考えてその表現とは何かがやっとわかってきたなって感じですね。

すべてはゆるくありのままに

海聖

中学生の時にゲイであることに気づかれたっておっしゃいましたね。僕は森さんがインスタライブでお話ししていた内容にすごく励まされたことがありました。そのライブで、ある方が「森さんは周りの方にカミングアウトされてますか?」みたいなことを質問されてて、前後は詳しく覚えてないんですけど、そのとき森さんは「友達に嘘をつきたくないから友達にはカミングアウトしています」とおっしゃっていたと記憶しています。僕は自分自身がゲイって気づいたときに、恐怖感とか、どうすればいいんだろうとか、隠さないとって思って、高校を卒業して東京の専門学校に行くまでずっと隠し続けていました。森さんはどういった経緯でそこまでの優しさというか、自分を守るより、周りの人のことを思える優しさに至ったのかなと考えています。カミングアウトに対してのマインドを、どういうふうに捉えられていらっしゃるかをお聞きできれば嬉しいです。


え、人に対して優しくしようと考えてたわけじゃなかったんですけど(笑)。

海聖

ほんとですか? めっちゃそういうふうに感じてました(笑)。

ゲイとか関係なしに仲良くなる友達がいますよね。人って仲良くなるときに、恋愛の話とかもお互いにし合うことが多いじゃないですか。もちろん恋愛しない人もいるから、それがすべてじゃないけど。でも、まぁそういう話をお互いして、大学でも仲良くなっていくことがよくあって。そこでみんなで恋愛話をするときに、自分が嘘をついてそれを女性に置き換えて話すのもなんか違うなと思ってたし、それだったらこの子とは本当の友達とは言えなくなっちゃうと思ったから、言いましたね。

そのときはいかにもカミングアウトな感じでしたけど、最近はもはやカミングアウトとかっていう感覚ではなくて、わざわざ言うこともしないけど、わざわざ隠すこともしないから、いつのまにか相手は知ってるみたいな感じになってることが多いです。家族にカミングアウトとかもしてないんですけども、いつのまにか向こうも気づいて知ってるし、今は結婚の話も養子の話とかも全然しますけど、いつ知ったのかはあんまりよくわかんないです(笑)。

自分はそんな感じで、ちょっとゆるい感じですね。ゲイであることが嫌だったら、離れてくしっていう感じだから、あんまり最近は相手がどう思うかも気にしないですね。初めて高校生のときにカミングアウトしたときは緊張しましたけど、でも「大丈夫ってこの子は言ってくれるだろうな」って思って言ってたから(笑)。その子とは本当に仲良かったんです。高校生のときには野球部の子に告白とかもしてたりして、男子校だったから、なんかそれで噂話が回ったらどうしようとも思ったけど、その子も優しくて。ヤンキーだったけど優しかったんです(笑)。それでその子に近い友達とかに相談とかもしてて。そう考えると最初から隠そうっていうのは自分はあまりなかったのかもしれないし、プライド高めだから「何で俺が隠さなきゃいけないの」って思っているのかもしれません。

写真|岡田翔真(@okadashoma__

LGBTQムーブメントの必要性

elabo編集部

アートとかファッションの業界にはLGBTQ+の方がとても多くいらっしゃる印象があります。森さんの場合、ご家族がファッション業界の方だったこともあり、そのままの森さんを自然に受け入れられたのでしょうし、森さんも自身も周囲に気負わず表現できているのが素晴らしいですよね。私は、たまたま1970年代のNYに生まれて、周囲にアート関係者が多かったのもあって、ゲイの方もトランスの方も、本当に何も特別な存在だと思っていなくて、むしろ洗練された人たちが多いという憧れのような印象だったんです。若い頃には「マイノリティ」だとさえ全く思っていなかったというか。そしたら2000年代に入って、LGBTQがある意味では「流行」し始めて、突然みんなレインボーフラッグとかを掲げ出したという感じでした。

家族がそのまま簡単に受け入れてくれたのかについてはまだ疑問があって、今でも父とハッキリ話したことはないけど、父の前でほかの家族と自分のセクシャリティを前提にした話はするという感じです(笑)。母も当たり前の用に受け入れてくれたのかはわからないし、勝手に気まずいと思ってた時期はあります。だけど、自然と今のような関係になることができました。ファッションやアート業界はLGBTQの方々が多いというイメージが僕にも多少なりともありますが、それはその業界の方々が表現をする仕事で内面を出しているからなのかなと思います。だから逆に言えば、他の仕事でもきっと同じ様にLGBTQの方々はいると思います。

elabo編集部

本当にそうですね。そして業種によっては、隠さざるを得ない方々もいらっしゃる。自分自身の感覚では、もともと普通に存在していたものに、突如脚光を浴びさせて、流行していることに少々違和感がありました。でも、都会だったら当たり前だったかもしれないけど地方では受け入れられていなかっただろうし、先程のお話にもあったように、業種によっては隠さざるをえない状況もあるでしょうから、やはり人口に膾炙して、今まで考えもしなかった人にも認識が広がっていく必要があるのだろうとは思います。そこでぜひ森さんとか海聖くんの意見を聞きたいのですが、このLGBTQムーブメントの盛り上がり方を、当事者であるお二人は、どのように捉えているのでしょうか。

自分は、そうですね、できることだったらこんなに取り上げられないほうがいいなとは思います。

elabo編集部

例えばドレスを着た森さんを見たら、みんな、「キャー素敵!」ってなると思うんですよ。それでいいんじゃないかって、私自身は思ってしまう部分があります。

できることならそっちのほうがいいんですけど、同性婚を含む法改正のことを考えると、それくらいムーブメントにしてもらったほうが、多少なりとも動きは出てくるんじゃないかなって思うんですよ。

elabo編集部

本当に的確な答えですね。

海聖

elaboのメンバーでもよく話すことなんですけど、今、過渡期だからこそ目立たないと制度的な改革などが進まないのではないかと、僕も思います。

だから今は、思いっきりLGBTQの運動に力を入れてもらって、法改正してもらった後はもう落ち着けばいいかなって、思ったりはするんですけど。

海聖

うんうん。

そもそも結婚っていう概念も古いから、なくしちゃえばいいのにとか思ったんですよ。

elabo編集部

いやわかりますよ、そうも言えますよね。

むしろ同性婚を進めていることのほうが、もはや古い気もしてきてて。どうせやるんだったら、いっそその先に行っちゃったほうがよくない? みたいな。でも多分、段階を踏まなきゃいけないから、まずは平等に結婚の権利かなとは思います。やっぱりムーブメントにしないと動かないですよね。自分は政権に携われるような頭の良さを持ってないからこそ、自分たちの立場を代表して政治に携わる人が必要だって思うんです。

elabo編集部

現実的に考えたら絶対そうですよね。たしかに現実的に変化を促すための手段として、あからさまな運動は必要ですよね。感受性のレベルで自然に変化していくだけでは足りないのかもしれない。海聖くんが言ってくれたように、制度を変えるってなるとある程度注目されて、代表者を国政に送り込んでっていう過程が必要だと。それをはっきり言えるのはすごいです。


それもある程度のレベルではだめなんですよ。強烈に注目してもらわないと、あの人たちは動かないから。

elabo編集部

強烈にね。


これだけ盛り上がっている現在でさえ、動かないんだもん(笑)。でも例えば自分の周りの友達とかに聞いても、問題とまでは言いませんけど、ひとつ課題だと感じるのは、みんな「わざわざ政治的な活動に参加したいとは思わない」とは言いますよね。

elabo編集部

そうなんですね。

「そこまでして結婚は求めてないから、いいや」みたいな人もいっぱいいるんですね。そりゃ結婚できるに越したことないし、権利がないことはおかしいけど、わざわざ主張するほどではないかなっていう人もいっぱいいる。そこの感覚がたぶん個々人でも全然違う。

海聖

僕としては、将来、結婚したいタイプなんで。ちゃんと法的に結婚できる状態であってほしいなっていうのがあります。

そうですね、僕も結婚したいタイプなんで。

海聖

僕の場合は、同じセクシャリティの方の知り合いが周りにたくさんいるって感じじゃないんで、情報源がYouTubeとかになってしまうんですけど。YouTubeである40代くらいの方が、今まで自分は結婚とかまったく無縁だったから、どこか無意識的に諦めてたみたいなことをおっしゃてて。それが今、同性婚の法改正が取り上げられたことで、「あ、自分結婚したい」って思ったと、「結婚したかったんだ」って気づけたとお話しされていました。僕も、最近になって、「結婚したい」とか「子どもを欲しい」って思えるようになったんですけど、法で認められてないから「別に結婚しなくてもいいや」って思ってる方もいっぱいいらっしゃるのかなって思っています。

そうですね。でも日本じゃないところで結婚できる場所はあるから、本当に求めれば結婚できる。だから、日本政府として覚悟してほしいのは、このままだといい人材は日本からいなくなるよっていうことです。

elabo編集部

そうね(笑)。

移住したり、海外の人と結婚して外国籍を取ったり、そうやっていい人材は少しずつだけどなくなっていくんだよ、覚悟して欲しいって思っています。自分は、日本でできないんだったら海外で結婚するつもりだし。もちろん日本が嫌いとかじゃないし、海外のほうがいいって思っているわけでもないんですけど。現実問題そうせざるをえないと思います。こういう仕方で自由を求める人は外に出ていっちゃうのかなーって思っています。出たくて出るわけじゃないけど、仕方なくという感じで。

みんな何かしらのマイノリティを持っている

elabo編集部

もう始まっていますよね。

そうですね、もう始まっていると思います。

elabo編集部

私はゲイではないけれど、例えば女性だって、できる人は別姓婚さえ認められない国からどんどん移住しちゃえばいいっていつも思っています(笑)。それで人口減になって本当に究極的に困って変わらないかしらと。もちろんこの意見は現実的ではないんですけど、それぐらいの認識を持っていたほうがよいと真面目に思います。いわゆる現在の日本の価値観にはまらない人たちのなかには、移住を考えている人も実際多いと思うし、そういうところまで来てるなーっていう感じはするんですよね。

みんな多分何かしらのマイノリティがあるので。

elabo編集部

いい言葉ですね。

そこを救っていく制度を見直さないと。自分が知らない法律によって苦しんでる人がいっぱいいるんですよ。移民の受け入れもそうだし。

elabo編集部

そうそう、おっしゃる通り。

いろんな人材が集まることで日本がより良くなっていくのに、もったいないって思います。

elabo編集部

もったいないです。

本格的な表現への志向

elabo編集部

Z世代はデジタル・ネイティブとかいわれますが、実際森さんがクリエーションしていこうってなったときに、インターネットを中心にSNSなどの手段が複数あったんだと思うんですよね。多分現在もいろいろ試行錯誤をなさってると思うんですけど、『HOPE Magazine』だったら、予算さえつけば紙でやっても絶対良いものだと個人的には思います。自分の表現媒体、表現手段についてはどう考えてらっしゃいますか?

最終的にやりたいのは映画制作なので、それを目指して今がんばっています。YouTubeとかにショートフィルムを今後上げることできたらいいなと思ってはいるんですけど、自分は古典的なものも好きで、写真も紙で見たほうが絶対いいと思ってるし、実際の展示も観たほうがいいいと思います。映画も作りたいけど、やはりできることなら映画館で上映されるような映画を作ってみたいと思いますね。そういう表現はちゃんと残ると思っているので。なので、あくまでSNSはプロモーションという位置づけです。と言いつつ、結局SNSを見てる時間が一番長いんですけど(笑)。

elabo編集部

お話を伺っていて、私が森さんの作品を好きなのって、そういうクラッシックなところなのかもしれないと思いました。改めて本格的なものを求めている感じがするというか。デジタルなものがやたら皆さん方の生活のなかに存在しているからこそ、もともとあった「本物」への憧れがあるんでしょうかね。

ああ〜たしかに。

elabo編集部

アナクロニックって言葉がありますけど、皆さんのZ世代の感覚だと、もはや映画のあとにテレビ、テレビのあとにインターネット、みたいに時系列がまっすぐになってないのではないかと想像します。だからこそ、いきなり「本物」に行きたいと思うっていう。みなさん世代と話していると、なんかそういう感じがすごくするんですよ。

そうかもしれないです。バレエやスケートも、映像ではなくやっぱ生で観ないとって思いますね。

海聖

森さんのお話を伺っていて感じたのは、昔からあるものも好きでいらっしゃって、その「好き」も捨てずに、未開拓な領域、冒険的な部分も求めていらっしゃるんだなってことでした。そのバランスが本当に繊細だと感じます。

そうですね。古いとか新しいとか関係なしに、何が好きかで繋がっています。

elabo編集部

今後の作品、森さんの活動の展開を本当に楽しみにしています。今日はありがとうございました。


[2021年8月22日、Zoomにて]

identity
2021/09/10
インタビュイー |
森望
(もり・かなた)

俳優、モデル、アートディレクター、フィギュアスケーター。2021年モデルとしてパリコレクションに初出演。自身で『HOPE magazine』を作り、アートディレクターとして表現の場を広げる。俳優としてもデビューをし、年内に主演の短編映画が公開予定。フィギュアスケート歴15年。

写真|岡田翔真(@okadashoma__

インタビュアー |
西田海聖+elabo編集部

西田海聖

いつか韓国とアメリカとスウェーデンに住みたい日本語しか喋れない韓国系日本人。

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