2021年、私の「選挙」──選挙権を持たない自分も未来に期待している
自分には選挙権がない。なぜ選挙権がないかを説明するためには、まずプロフィールの「韓国系日本人」という記載を訂正しなければならない。自分は国籍という点で言えば、今のところまだ韓国籍なのである。
自分には選挙権がない。
politics
2021/10/30
執筆者 |
西田海聖
(にしだ・かいせい)

いつか韓国とアメリカとスウェーデンに住みたい日本語しか喋れない韓国系日本人。

自分には選挙権がない。

 

なぜ選挙権がないかを説明するためには、まずプロフィールの「韓国系日本人」という記載を訂正しなければならない。自分は国籍という点で言えば、今のところまだ韓国籍なのである。

父が在日韓国人3世で、母が韓国人。なので自分は在日韓国人4世になる。家族で日本国籍に帰化をするという話があったのだが、国籍を変えるということをサラっと決められるわけではなかった。このことを説明するためには、まず父と母の話から始める必要がある。

 

どちらかを選択しないと得られない選挙権

 

まず帰化をしようという話を最初にしたのは父からだった。父は国籍を変えることに数年前までは抵抗感があったらしいが、日本でずっと暮らしてきて選挙権がないことにやはり疎外感を感じていたという。帰化を決めた理由は他にもあると言っていので、選挙権がないことだけでななさそうだが、どちらにせよ父は日本で産まれ育ち、これからも暮らしていく予定だから帰化をする選択は自然なことだと自分は思った。

ただ父も悩んでの決断だった。これまで韓国国籍であった理由も愛国心というよりも、父にとっての「おじいちゃん」への尊敬の念があったからだといっていた。

 

母は学生時代に日本に留学にきた韓国人である。その時に父と出会い、結婚し、自分がいる。自分の友人に聞いても「言われないと気づかない」というくらい流暢に日本語を話せるし、母は今も会社に勤めて働いている。自分は、異国の地で働きながら育ててくれたことに感謝と尊敬の念を抱いている。自分が帰化に悩むのは、母のアイデンティティも大事だからだ。母は成人するまで韓国にいたし、母方の家族は韓国にいるのだから、すでに日本で暮らしている年数の方が長いといえど、アイデンティティは韓国だろう。

 

自分は小さい頃から日本で育ってきたが、父とは少し境遇が違う。母が韓国人であることとや、母以外にも韓国の人と過ごすことが多かったことから、自分の中にはどちらのアイデンティティも存在していて、どちらも尊重したい気持ちがある。正直帰化する話がでた時は、まだ決めきれないという抵抗感があった。父には帰化をするなら家族でしたいという気持ちがあるのだが、その気持ち自体を否定的に思うことはない。ただ、母の事を思うと少し躊躇する気持ちもある。なので結局まだ家族全体でどちらを選択するか決めきれていない。二重国籍が許されるのなら、その選択肢を選びたいと思う。

 

自分のなかでの変化

 

選挙権がないこともあり、国籍を変える選択肢を考えるようになった父とは違い、すでに政治に関心をさほど持たない日本の若者に完全に同化している自分自身は、政治や選挙に対して関心がなかった。実際ここ数日も、衆議院総選挙で誰に投票するかよりも、韓国のアイドルオーディション番組で誰に投票するかの方が友人たちの間では話題になっていたのだ。

 

「関心はなかった」と過去形にしたのは、今年はelaboのさまざまな選挙関連企画を側で見ていて影響を受けたからかもしれない。例えばかぎろひさんは、エッセイのなかで「きっとそれぞれにとって重要な問題、その解決のために必要なものがあるはずだ。必要なものがわかったのならば、それを政治の場で実現してくれる党や政治家をすぐに探す。そうすれば、きっとあなたも「選挙へ行こう」と思えるはずだ」と書いていたのだが、これを読んで、なぜ投票に行く必要があるのかその理由がクリアになったし、その視点で政治をみると関心が自然と湧いたからだ。

 

また、テレビ離れをしている自分たちの世代は、情報を得るツールを、自分の「好き」や「興味」だけで埋め尽くされてしまいがちなスマホだけに頼りがちで、気がつくと鎖国状態=エコーチェンバーになりかねないのだが、最近では、芸能人やインフルエンサーが選挙に行こうと呼びかける投稿や、インスタのストーリーで期日前投票に行ってきたという投稿を目にすることが多くなった。こうしたことも少しは関係しているだろう。政治に関心が湧いたことは、自分にとって大きな変化だ。

 

アイドルに投票するように、政治家に投票したらどうか

 

先に触れた韓国アイドルオーディション番組とは、ファンがデビューを決める公開オーディション番組のことだ。なぜ流行っているのか、その理由を一つあげるとすると、自分が投票して選ばれたメンバーがデビューし、活動を通してさらに成長していく様を見ることができ、そのプロセスにワクワクしているからだと個人的に思う。ただ、思えば、衆議院総選挙に投票したらとした、その変化はもっとリアルに自分の生活に影響を与えるものになるだろう。韓国アイドルオーディションくらいアツく盛り上がれば、政治はどうなるだろう?そんな未来が見てみたい気がしてきた。

 

そのような状態になるには、やはり自分が投票することで何かが変わったという実体験が必要だし、まだ投票に行ったことがない人がまずは投票に行く必要があるだろう。

 

自分が投票したアイドルがデビューするように、自分が投票した政治家が国会に行ったらどうなるのか。

 

それは大きな変化ではないかもしれない。けれど、自分の生活に直結した何かが確実に変わるのだ。

politics
2021/10/30
執筆者 |
西田海聖
(にしだ・かいせい)

いつか韓国とアメリカとスウェーデンに住みたい日本語しか喋れない韓国系日本人。

写真 | 森岡忠哉
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