#youth|コロナ禍で就活は変わったのか?──22卒が抱える不安と期待
現在大学4年生、世に言う就活生である筆者は、ただならぬ焦りと不安のなかで1日平均2個の面接をこなす日々を送っている。「新型コロナウィルスの流行が就職活動に影響を与え……」というフレーズは、筆者がまともに就活を開始する前から耳にタコができるほど聞いていた。
企業にこそ問いたい。「コロナ禍に何を考え、どう行動しましたか?」 
politics
2021/06/14
執筆者 |
真嶋要
(ましま・かなめ)

22歳。食事と趣味に使うお金がいくらあっても足りない。

就活のいま

現在大学4年生、世に言う就活生である筆者は、ただならぬ焦りと不安のなかで1日平均2個の面接をこなす日々を送っている。「新型コロナウィルスの流行が就職活動に影響を与え……」というフレーズは、筆者がまともに就活を開始する前から耳にタコができるほど聞いていた。実際に、ひとつ上の先輩方から、内定を獲得する時期が大幅に遅れたり、航空やホテル、テーマパークなどの業界での就職活動が困難を極めたりと、さまざまな苦労話を耳にして、「先輩方さえこんなにもコロナで苦労しているのだから、コロナ禍真っ只中の私たちはもっと過酷な就活になるに違いない」と予想していた。だが、蓋を開けてみれば筆者の予測は見事に外れ、22年卒の学生の6月時点での内定取得率は、68.5%と、2年前と同水準のものだった

コロナ禍の就活の在り方を体感して筆者が思うのは、変化に適応する業界・企業と、そうでないところの差の拡大である。いくら業態が違えども、一部のベンチャー企業等で取り入れられている選考の一貫としての長期インターンなどを除けば、新卒採用の手法に関して業界や企業ごとの差はあまりない。それにも関わらず、一次面接から対面にこだわる企業もあれば最終面接までオンラインを貫く企業もある。ごく稀だろうが、自分が参加したなかには、参加必須の説明会を対面のみで行っている企業もあった。同じコロナ禍にあって、この差異が生まれる理由は、「変わっていく気があるか否か」という点ではないだろうか。

根強い対面信仰

筆者の志望業界は、どちらかと言えば体質が古い。令和になって数年経とうというにも関わらず多くのエントリーシートは手書き郵送が基本であったし、受けた面接の半数は最終面接でなくとも対面である。現にいま、自分は他地方での面接のために夜行バスに乗りながらこの記事を書いている(ちなみに筆者が住む都市にもその企業のある都市にも緊急事態宣言が出ている)。学生も企業も「コロナ慣れ」したために危機感が薄れているということは全業界に通じる2021年の特徴と言えるだろうし、対面でないと進行が難しいグループディスカッションや採用可否に直結する最終面接等を、適切な対策をとりながら対面で行うことには妥当性を見いだせるかもしれないが、果たしてたった15分間の1次面接を対面で行う意味はあるのか、はなはだ疑問である。

初期の段階から対面で選考を行う企業は「皆さんと直接会って人柄を知りたいと考え、対面開催に踏み切りました」と口を揃えて言う。決して合理的な理由が語られることなく、「対面のほうが気持ちや人柄が伝わるはず」という暗黙の了解のもとで、そのように言われてしまうことに、違和感を覚えずにはいられない。筆者が面接を受けていて感じるのは、対面でもオンラインでも、少なくとも面接官の人柄あるいは選考のために演じているキャラクターはこちらに十分伝わっているということだ。真摯に話を聞いてくれる人、厳格な姿勢で指摘する人、圧迫のつもりなのか非常に態度が悪い人など、選考を通じて出会う社会人の人柄はみな対面にせよオンラインにせよそれぞれである。面接を通してそれを実感すればするほど、強硬な対面開催の姿勢からは信仰じみたなにかを感じてしまう。

もちろん、対面であることにより大きな意味がある場合があることもわかっている。オンライン飲み会が思いのほか流行らなかったと言われていることからもわかるように、人と人とが交流を通じて仲を深めるということに、オンラインツールはあまり向いていない。一方で、理性的に会話をして相手を評価する面接は、オンラインだからといって目的が達成されないということにはならないのではないか。

コロナ禍がもたらしたもの

私が危惧しているのは、コロナ禍という世界的事象が、一定の業界・企業といった小さな世界の古い習慣を取り払う契機となるのではなく、「やっぱり対面だよね」という安易な認識を再定着させてしまう材料になることだ。もちろん前述のように、対面であるほうが合理的である、と再評価されることは大いに構わない。しかし同時に、今まで「何となく、イメージで」「暗黙の了解で」良しとされてきたものに「オンライン会議とかあったけど、やっぱり会議は対面に限るよね」といった新たな言い訳を与えてしまうことは何の利益にもならない。多くの人々に数えきれないほどの不幸をもたらしているコロナ禍が、せめて組織にとって変わっていくべきことを見つめ直すきっかけぐらいにはなってほしい。そんな願いを抱かずにはいられないのだ。

企業は、「あなたはコロナ禍の間に何か新しく取り組んだことはありますか」と面接やエントリーシートで問う。学生のチャレンジ精神や自分の目標・やりたいことに向き合う姿勢を知るための質問なのだろう。だが私は、企業にこそそれを問いたい。御社は、コロナ禍の間に何を考え、どう行動しましたか? 苦境こそ変化のための好機と捉えて、自ら変わることを選択できましたか? 社会の先輩方に、ぜひとも教えていただきたいものである。

politics
2021/06/14
執筆者 |
真嶋要
(ましま・かなめ)

22歳。食事と趣味に使うお金がいくらあっても足りない。

写真 | 森岡忠哉
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