#youth|22卒が抱える就活システムへの疑問──学生生活を切り売りする就活をいつまで続けるのか
多くの大学が夏休みに突入しようとしている8月、後輩と話題になるのはもっぱら就職活動のことだ。インターンシップやそのための選考に明け暮れる彼らは、皆少なからず不安や疑問を抱いて4年生のところへ足を運んでいる。1年前の筆者も彼らと同じであった。
ここでしくじったら終わりだという強迫観念がある。
politics
2021/08/02
執筆者 |
真嶋要
(ましま・かなめ)

21歳。スパイスカレーとパンを愛するつぶあん派の大学4年生。食事の時間のために生きている。

多くの大学が夏休みに突入しようとしている8月、後輩と話題になるのはもっぱら就職活動のことだ。就活を終えた4年生がアルバイトやサークル活動に復帰し、主に1つ下の後輩が就活事情を聞きに来るというのは現在どこの大学でも盛んに見られるやり取りではないだろうか。1年前のこの時期に何をしていたか、今やっておくべきことは何かと尋ね、インターンシップやそのための選考に明け暮れる彼らは、皆少なからず不安や疑問を抱いて4年生のところへ足を運んでいる。1年前の筆者も彼らと同じであった。

 

大人の事情に振り回され続ける就活生

 

就活生は経団連をはじめとしたさまざまな団体によるルールに一見守られているように見えて、実情としては振り回され続けている。通常であれば4年生になる年の3月に広報解禁、4年生の6月に選考解禁となるが、実際の就職活動は3年生の6月から始まるというのは最早常識だ。かつて、新卒採用のスケジュール早期化が学生の負担になっているということが問題視され、選考開始時期が経団連によってルール化されたこともあったが、現在では廃止されている。また、インターンシップが「就業体験」であるにもかかわらず、その多くが単なる説明会やセミナーと変わらないことについても問題となり、現在は1日開催のイベントは「1Day仕事体験」という名称で呼ばれている。一方、このようなルールや言葉の変更はあれども、実情はあまり変わらない。2日以上のインターンシップだからといってキャリア観や業務理解を深められるような実質を伴った就業体験が確約されているとは限らないし、ルールがあろうとなかろうと6月よりも前に平然と内々定は出ている。学生は、どこまで信用していいかわからない「表向きの就活情報」と、「本当の情報」との相違に戸惑いながら、さまざまなツテや情報を駆使して就職活動をしなくてはならない。これこそが「就活は情報戦」と言われるゆえんのひとつである。

 

「聞き分けのなさ」が問題なのか

 

就活システムに対する疑問や不満の吐露は、必ずと言っていいほど「制度に従わない就活生の努力不足」の問題として片づけられてしまう。社会人になるのだからいつまでも文句を垂れていないで企業のルールや「大人の事情」を理解して受け入れるのが正しいと、それが大人の生き方であると、私たちは親をはじめとした身近な大人から説かれ、丸め込まれてきた。私も元来放任主義である父親から「でもそれが社会に出るってことだからね」と言われて驚いたことがある。社会のすべてを見てきたかのような口調でそう言われてしまえば、社会人としての知見も経験もない新卒就活生が彼らに反論するすべを持ちうるわけもなく、まだ何も知らない子どものように諭されて終わりだ。

 

限られた学生生活のうち3年生の6月から4年生の夏という1年間を就職活動に費やすことを半ば強制されることに不満を持つことや、研究や留学・課外活動といった学生としての活動に打ち込みたいという想い、あるいは時間的経済的にそのような余裕が持てないという学生の事情は、本当に子どもじみた駄々だろうか。いくら1〜2年後に社会人になるといっても、いま現在学生である以上、それは正当な権利主張なのではないか。それをわかっていながら、社会は学生を「子ども」扱いすることで「権利主張を無視している」「機会を踏みにじっている」という問題を矮小化しているのではないか。このように、就活システムと学生の間にある軋轢、身近な社会人と学生の間にある軋轢は、単なる就活生の現実逃避や身勝手として片付けられていい問題ではない。

 

何が就活生を駆り立てるのか

 

そうは言っても、実際問題として2021年現在、新卒就活生がシステムに乗らなければ間違いなく選考の機会を逃すことになる。いち早く就活システムに順応しスケジュールを把握し対策を重ねてインターンシップに応募した者はインターンの選考通過率が高まるだろうし、インターンシップに参加したことによって早期選考の機会が与えられたり参加実績が選考時に加味されたりしているのは紛れもない事実である。elabo編集部「インターンシップ解禁から1カ月──世界のZ世代が対峙する就活ブラックボックス」で指摘しているように、日本の新卒就活の現場において、インターンシップは優秀な学生を囲い込む青田買いの手段として機能しているからだ。そのようなルートに乗る可能性をみすみす逃して選考に臨むことへの不安と恐怖が多くの就活生を駆り立て、メディアや就活エージェントがそれを煽り、6月時点での23卒のインターンシップ参加率は約3割と増加した「インターン、23年卒の約3割が参加 6月時点、民間調べ」(日本経済新聞)

 

終身雇用制度・年功序列型賃金体系等を念頭に置いたかつての「就職観」が薄れてきた現代においても、私たちは新卒就活に対して大きなストレスを抱える。そんな時代ではないというのはわかっていても、ここでしくじったら終わりだという強迫観念がある。まだかつての就職観をもっている親世代に対する憧れもある。そんな感情や背景に突き動かされて、私は学生時代の一部を切り売りすると妥協してシステムに従った。

 

23卒学生へ

 

制度と自分の気持ちの間で板挟みになり、葛藤を繰り返しながら就活をした当事者のひとりとして、筆者は23卒の学生に対して「今のインターンシップは間違っているし茶番だから行かなくていいよ」なんて無責任なことは言えない。でも、「そんなもんだよ」と順応を促すことも絶対にしない。尊ばれるべきはシステムや企業の持つ「大人の事情」の側ではなくて、私たち一人ひとりの価値だ。その価値と企業の求めるところとが合致するのが最も理想的な就活と言えるだろうし、就職活動を終えた立場になっても筆者はそれを求め続ける。私たち一人ひとりの価値が多様であるのだから、それを新卒一括採用という制度に基づいて単一のスケジュールや方法に押し込めることは許されない。遅々としてでも変わっていくことを願い、求めながら、制度に飲み込まれてしまわないようにいたい。そして、新卒就活市場における学生のような、弱い立場にある人に強者の都合を押し付けない社会を作っていこう。

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2021/08/02
執筆者 |
真嶋要
(ましま・かなめ)

21歳。スパイスカレーとパンを愛するつぶあん派の大学4年生。食事の時間のために生きている。

写真 | すべて森岡忠哉
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