#youth | 私たちはもう一歩先の未来が見たい──ジェンダーニュートラルな制服
最近、ジェンダーニュートラルな衣服をK-POPアイドルやインフルエンサーが着用するようになり、世界中で多様性を認めていく方向に変わりつつある。私たちの身近なところに目を向けるならば、学校制服においても、性の多様性を認めていこうとする動きが起こ起こりつつある。
#板橋高等学校 #土佐塾中学・高等学校 #kemio
identity
2021/05/28
執筆者 |
眞鍋ヨセフ
(まなべ・よせふ)

22歳。K-dotを敬愛する優しきHIP-HOPオタク。映画もアートも読書も好き。自称優柔不断。

最近、ジェンダーニュートラルな衣服をK-POPアイドルやインフルエンサーが着用するようになり、世界中で多様性を認めていく方向に変わりつつある。これは何も、テレビやスマホの向こう側の出来事だけではない。私たちの身近なところに目を向けるならば、学校制服においても、性の多様性を認めていこうとする動きが起こりつつある。

型に当てはめる制服 

私たちの制服のイメージはどのようなものだろう?「制服はそもそもダサくて嫌だ」とか、「ブレザーがよかった」とか、「いや自分はセーラー服」とか、いろいろな意見があるだろう。制服の歴史は、社会背景を映し出している。日本の制服の歴史を見るだけでも、1960、70年代の学生運動の余波のなかで生まれた長ラン、80年代に団塊世代が作ったニューファミリーの子女が着用したトラッドなブレザースタイル、90年代に流行した着崩しやミニスカ、ルーズソックスなど、規定された着方に反抗する着こなしやアレンジなどは過去を遡って見ることができる★1。

そもそも論から始めるならば、制服とは着用している人間がどの学校に所属しているのかを示すユニフォームだ。制服を着用することはルールに従うことであり、集団で着ることにより統一感が出る。制服は基本的に、私たちを型に当てはめて、縛るものなのだ。そこで私たちが当てはめられる型が同時に、男女という二元論に基づいていることに注目したい。

台湾の無限制服

2020年10月、台湾でこんな制服のプロジェクトが実施された。ぜひ次の動画を見ていただきたい。

UNI-FORM 無限制服「UNI-FORM無限制服 形象影片」

ラインの入ったスリーボタンのジャケットやプリーツスカート、クロップトップスなど、普段のファッションとしてもオシャレに見える。この制服は台湾で、メリカに拠点を置く大手広告代理店Ogilvyの台湾支社であるOgilvy Taipeiと台湾人デザイナーAngus Chiang 、そして『Vogue』など著名な雑誌を幅広く展開するCondé Nastが立ち上げた「Project Uniform」★2のカプセルコレクションである。企画を主導したOgilvy Taipeiによると、これは、

“World’s first gender-neutral school uniform thatcelebrates equality and advocates the importance of respecting all choices.” ★3

“世界初のジェンダー・ニュートラルな制服であり、平等性を祝い、すべての選択肢を尊重することの重要性を提唱する” のだそうだ。

このコレクションはをオンラインで購入することもできる

先ほどの動画に映った、笑顔というよりは、どこか覚悟の見えるモデルの表情、カラフルな配色、校則の概念すら忘れそうな自由な服装は、とてもクールだ。この画期的なプロジェクトは、台湾の台北近郊にある新北市立板橋高等学校(Banqiaohigh school)のとある活動にインスピレーションを受けて始まったのだそうだ。

板橋高等学校のキャンペーン

台湾はアジア諸国の中で多様な性に対して、最も先進的に取り組んでいる国として知られている。2019年にアジアで初めて同性婚を認める法案が可決されたことでも知られており、さらには国民のIDの性別欄にノンバイナリー★4の選択肢を盛り込む法案も検討されている。

板橋高等学校が行ったキャンペーンとは2019年5月、ちょうど同性婚を認める法案が可決されるタイミングで、同校の男子生徒と教師が性の固定概念を壊すことを目的として、一週間の間スカートを着用するというものだった。キャンペーン中、男子生徒と教師たちはスカートを着用して過ごし、性の多様性を訴えた。

板中學生會Facebookより

このキャンペーンが成功したことから、その2カ月後に板橋高等学校では、2020年度から生徒が自分で制服を選べるようになった。板橋高等学校の関係者は、この決定は男子生徒にスカートを履くことを奨励するものではなく、生徒の自由意志を尊重するものだ★5と述べている。この取り組みは台湾のすべての高校で適用されるわけではないが、台湾の教育省やLGBTQ+の活動団体からも評価されている。これがモデルケースとなり、台湾に留まらず、他のアジア諸国においても、今後ジェンダーに捉われない制服の導入を促すことが期待できるように思う。

日本における制服の選択

日本においても近年、性別による制服の縛りを無くしたり、選択肢を広げようとする動きが出てきている。都道府県教育委員会は、日本経済新聞の取材に対して、2020年時点で、19都道府県の公立校のみでも600校超が、制服の選択肢を広げていると答えた★6。

四国の土佐塾中学・高等学校では、生徒会の意見から男女の制服を自由に選ぶことができるようになった★7。そのきっかけは、女子生徒の冬服の防寒の難しさに対する問題提起であったが、生徒会が実際に制服の自由化を学校側に訴えた際には、防寒だけではなく、多様な性への配慮の観点が取り入れられた。学校側への働きかけと並行して、生徒会が取った全校生徒のアンケートでは、9割超の生徒がスカートとズボンを選択することの自由化に賛成した。生徒会の訴えを受けて学校側は、2021年度から性別に関係なく、男性型、女性型の制服を自由に選択できるように決定した。

制服メーカーであるトンボによると、自転車に乗る、防寒に良いという理由から、女性用スラックスは人気があるそうだが、男性用スカートは実際の製品化には至っていないという。それはLGBTQ+の団体から、カミングアウトの強制になるのではという懸念があったからだそうだ★8。いずれにしても、土佐塾中学・高等学校だけではなく、ほかの都道府県でも、公立、私立を問わず制服の選択の自由化はどんどん進んでいる。

もう一歩、先の未来を私たちは見てみたい

このように制服をめぐる希望に溢れた出来事の一方で、学校には、いまだにブラック校則と言われる、理不尽かつ人権問題とも捉えられかねない事例もたくさんある★9。子どもや若者は、相変わらず無力な立場にいる。そうした状況にあって、制服の選択の自由化を生徒たちが主導して提案して採用されたというニュースは、ポジティブな光を放ち続けている。さらに、台湾をはじめとする海外にも同じような事例があるということも、まだ知らない仲間たちが、同じ問題に対峙してきたのだという希望をもたらしてくれる。

kemio「人生最後だと思われる25歳の制服ディズニー」

もう一歩先の未来を私たちは見てみたい。先にあげた台湾の“Project Uniform”の制服は、制服自体が、ジェンダーニュートラルであるという点が進んでいると言える。女性用スラックス、男性用スカートという呼び方があるように、男女という二元論に固定されていて、そのどちらかを選ぶ自由なのではなく、“Project Uniform”では制服そのものがジェンダーニュートラルなデザインで提案されているのだ。その意味で、このプロジェクトは、今後こういったジェンダーニュートラルなデザインこそが、制服に留まらない新たなスタンダードになるのかもしれないという希望と未来を私たちに見せてくれる。

台湾ほど、性の多様性への理解が進んでいない日本では「じゃあ、制服ない高校行けばいいじゃん」とか「たかが制服で大袈裟な」といった意見もあるだろう。しかし、多感な時期を過ごす生徒や若者が、制服だけに限らずとも身近なところから、「私たちの世代では当たり前」という環境を作り上げていくことが大切だろう。

そのためにも、まずは知ることだけでも一歩になる。知らなかったことを知る、知ったことを行動に移す、行動に移したことが成果になる。そういった希望をひとつずつ重ねて、優しさと希望のある未来を、アジアの仲間と連帯して勝ち取っていかないか?

★1──「日本の学ぶスタイルの変遷(昭和・平成)」(トンボ)

★2──「UNI-FORM 無限制服

★3──KATERIN PANTALEON “The World’s First Gender-Neutral School Uniform Launches in Taiwan”, in branding in asia, 13 OCTOBER 2020.

★4──自分の性認識に女性や男性といった枠組みを当てはめない第3の性を指す。

★5──“Taiwan school to allow studentsto choose their own uniform, regardless of gender — a first in Asia”, in THE INDEPENDENT News & Media, 26 JULY, 2019.

★6──「女子もスラックス可 制服選べる公立高、600校超に」(日本経済新聞、2020年12月7日)

★7──「学校の制服選択を「ジェンダーレス」に 生徒の声が校則変える 防寒対策や性的少数派に配慮も【高知発】」(FNNプライムオンライン、2021年3月22日)

★8──「男子スカート、普及まだ先? 広がるジェンダーレス制服―識者『選択肢増やして』」(「時事ドットコム」2021年5月10日)

★9──kemioがコロナ禍で制服ディズニーをバーチャルで楽しむというこの動画は、上のリンクにある大阪の府立高校の黒染め校則の公判の日である2021年2月12日にアップされている。この動画の中で彼は制服を7年ぶりに着ながら、高校時代の校則の厳しさ、理不尽さを振り返り、「ずっと、このまま(高校生)だと思っていたけど、現実は甘くなかった。やっぱ年齢と同時に社会に放り込まれ、学校で教わってないことをいきなり、やれって言われる。教育よー、変われ!」(00:02:47〜00:02:56)と日本の教育について意見している。

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2021/05/28
執筆者 |
眞鍋ヨセフ
(まなべ・よせふ)

22歳。K-dotを敬愛する優しきHIP-HOPオタク。映画もアートも読書も好き。自称優柔不断。

写真 | Unsplash
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